私は2014年から2015年にかけて、1年間イギリスで暮らしました。
しかし、飛行機代と手続代行費用、おみやげ代などを合わせて60万円程度を用意しただけで、本当に安く行くことができました。
この話をすると、ワーキングホリデー経験者や語学留学をしてきた人にはびっくりされます。
それでも私は、少ない予算ながらも、
イングランド北部の田舎に暮らして、美しい四季を満喫し、パブやカフェにも行き、
クリスマスやイースターなども、地元の人に混じって本格的に体験することができました。
また、イギリスにいた間にポルトガルとラトビアへの2回の旅行もしています。
私はイギリスで、食住提供型の有償ボランティアをしてきました。
日本ではほとんど見かけないタイプのボランティアなので、分かりにくいかもしれません。
今回は、私が実際に体験してきたボランティアの内容と、
意外と知られていない「イギリスのボランティアビザ」についても説明していこうと思います。
本当に安く滞在できるので、語学学校ではなくボランティアで渡英するというのも、お金がない人にはおすすめです。
目次
イギリスのボランティア活動は、外国人ウェルカム
海外で日本人が参加できるボランティアには、色々な種類があります。
よくあるのは、日本語教師や農園での収穫のお手伝い、老人ホームでの高齢者サポートなどです。
生活スタイルも、寮だったり、個人の家に住み込みだったり、施設に複数人でシェアして暮らすなど様々なパターンがあります。
イギリスは福祉先進国なので、ボランティアを受け入れている福祉施設が数多くあります。
チャリティ団体やNGOを主体として、「ボランティアをしたい人」と「ボランティアを必要とする施設」をつなぐ窓口も用意されています。
政府も、その活動の後ろ盾として「チャリティーワーカービザ(通称ボランティアビザ)」という枠を作り、他国からの福祉ボランティアの受け入れを行っています。
特に、高校生くらいの若いボランティアスタッフをよく見かけました。
ヨーロッパで取り入れられている「ギャップイヤー」という仕組みのためかもしれません。
ギャップイヤーとは、高校を卒業してから大学への入学までの期間、あるいは大学卒業から大学院への進学までの期間に、旅をしたりボランティア活動をしたりすることです。
若者にとって、大学では得られない経験をすることができます。
私も、ドイツやデンマーク、コロンビアなどから来た学生と一緒にボランティアをしましたが、
このギャップイヤーの期間に他国に暮らし、様々なバックグラウンドを持つ人と交流することはとても素敵だなと思いました。
どんな場所に住んで、どんなボランティアをしたのか
私が参加したのは、通称「ボランティアホリデー」と呼ばれるタイプのもので、
長期間、ひとつの場所に住み込みで暮らすプログラムでした。
外国人ボランティアを常に2〜4人常駐させているという、イングランド北部の障害者施設を紹介してもらえたので、そこで1年間生活しました。
その施設は、築100年くらいの古いお屋敷を改築した建物で、ボランティアスタッフは屋根裏部屋に住み込みでした。
梁や床は全部ナナメに波打っているし、ドアは歪みに合わせて作られたためか平行四辺形になっているような、味わいのある住まいでした。
平日は朝9時からだいたい夕方4時半まで働きました。
その施設では、ボランティアスタッフは、アクティビティの補助を行うのが仕事でした。
毎日、アクティビティルームに集まる利用者さんと一緒に、クロスワードパズルを解いたり、ボードゲームをしたりしました。
ボウリングや競馬ゲームなどの体を動かすゲームをすることもありました。
歌ったり、外を散歩したり、お菓子作りをしたり、ビデオを見たり、とにかくいつも利用者さんと遊んでいました。
ほとんどの利用者さんが車椅子で、会話もままならないことも多く、様々な場面で介助が必要だったのです。
落としたボールを拾ったり、カードをめくったり、トイレまで車椅子を押したりということがボランティアの仕事でした。
見学や研修や、珍しい体験も盛りだくさん
事前に言われていた通り、研修を受けてからでないと実際に介助してはいけないというルールがあり、期間の最初は研修が多かったです。
車椅子の利用者さんを車に乗せ、シートベルトを付ける練習などもありました。
車椅子用のブランコに車椅子を設置するのも、慣れが必要でした。
場合によっては、利用者さんに食事を食べさせることもありましたので、その前にも研修がありました。
食事の介助の研修では、実際にとろみ剤(液体の粘度を上げる粉末)を使ったり、とろみのついた飲み物を試食したりしました。
マッサージ師や、音楽療法の専門家が来て行うプログラムもありました。
体を自由に動かしにくい利用者さんでも、歌ったり、踊ったり、楽しそうでした。
世界の民族楽器を触ったり、音楽クイズがあったりしました。
週に一度のマッサージの日は、私も楽しみにしていました。
専用のマッサージルームに静かな音楽を流し、暗がりに色とりどりの照明を光らせて、
オイルをたっぷり使って、利用者さんにマッサージをするのです。
プロの横でやりかたを覚えて、私も施術させてもらいました。
マッサージ師のお姉さんがとても優しい人で、おしゃべりをしていると私までリラックスできました。
月に2〜3度の割合で、バーベキューやコンサート、キリスト教関連のチャリティ、日帰り旅行などにも一緒に連れて行ってもらいました。
身体障害者の人専門のリゾートホテルなど、日本では珍しいサービスも見る機会があって、やはり福祉先進国はすごいなと思いました。
なぜ費用が安かったのか=おこづかいが出たから
遊んでいるのか仕事しているのか分からないような環境でしたが、驚いたことに、施設から毎週50ポンドのおこづかいが出ました(140円換算で7000円)。
※施設によっておこづかいの出ない場合もありますし、金額もまちまちです。
物価の高いイギリスでは、これが本当に助かりました。
もし、施設外に出かけずに過ごせば、おこづかいだけで年間、約364,000円の貯金ができることになります。
※1年間52週間×50ポンド=2600ポンド→これを140円換算
お休みは基本的に週末だけでしたし、田舎だったので遊ぶところもなく、食事もすべて出してもらっていたので、
私にはこのおこづかいだけで十分でした。
つまり、食住を提供してもらったことと有償ボランティアだったことにより、ほとんど生活費がかからなかったのです。
私は日本で両替してきた少額の英ポンドの他に、日本円も持参していましたが、最後まで円をポンドに換金することはありませんでした。
そもそも私が「ボランティアビザ」を選んだ理由とは
日本人がイギリスで暮らすためにはビザが必要ですが、
よく知られているものに「労働ビザ」「ワーキングホリデービザ」「観光ビザ」「学生ビザ」があります。
※正式名称は異なります。また、ビザの規定は頻繁に変わることがあります。
私が利用したのはチャリティーワーカービザ Tier 5、通称「ボランティアビザ」と呼ばれるものです。
イギリスに行く前は、外国に住んだこともなく、海外旅行の経験もほとんどなく、ビザについても何も知らなかったものですから、
とのんきに考えていました。
しかしよく調べてみると、とっくにワーキングホリデーの年齢制限(30歳)は過ぎており、
労働ビザがもらえるような語学力も経験値もなく、語学学校へ1年も行けるだけのお金もなかった私にとって、
実際のところ、ボランティアは最後に残されたたった一つの方法だったのでした。
具体的なボランティアの探し方や、手続きについて知りたい方は「イギリスでボランティアをするときの、申し込みから活動開始までの流れ」を参考にしてみてください。